<プレイバック part.16>
VOL.76 「悲しみのフェスタ」 真璃子 (S62.3.21) <FL>
作詞・曲:高見沢俊彦/編曲:武部聡志
前回ゴクミの「初恋に気づいて」を紹介しましたが、同じラインナップによるこの曲をご紹介します。
真璃子の5th.シングル「悲しみのフェスタ」です(オリコン最高位18位、売上5.9万枚)。
作詞・曲は高見沢俊彦。アレンジの武部聡志とのコンビでは他に「失恋カフェ」があります。
歌詞といえば恋にさまよう女性を綴っていますが、
私の気持ちがどうのこうのと言うより、情景描写に重きが置かれている気がします。
最後の“愛にたどりつけないまま”が言いたいが為の気分的な言葉の羅列か。
アイドルの女の子が歌うにはアダルトな内容です。
メロディーはどマイナーの8ビート。同じ動機が繰り返されるので覚え易いメロです。
高見沢氏が曲を書くと大陸的な曲やハネ物(Kyon2「ハートブレイカー」)になりがちですが、
この曲はストレートなメロディーです。大体どの曲にも共通するのは
サビが余り長くなく余計な仕掛けが無い所です。
編曲は武部聡志。“恋のJYPSY
DANCE”だけにラテンフレーバーの重量感あるロックテイストに
仕上がっています。リズム隊も派手だし相変わらずシンセの使い方が綺麗です。
リフレインでは「君は流れ星」と同じストリングス系の伸ばしが堪能できます。
ボーカルは安心印。丁寧な歌い込みに好感が持てますが、「悲しみのフェスタ」ではちょっと変身。
優等生振りは捨て凄みさえ伝わってきます。特に2番の“激しくっ燃えてへェ”辺りなど
ゾクゾク来ます。ただサビ前のバッキングがなくなった後の入りが甘いのが少々気持ち悪いか。
次作の「あなたのすべてにRUN
TO
YOU」でもメジャーで弾けようとしましたが、
本来持つしっとり感が表に出て今一つハマリ切れませんでした。
マイナーな方向で情念を込める歌の方がお似合いのようです。
結局勝負曲と謳われた「あなたのすべてにRUN
TO
YOU」はオリコン最高位13位を
記録したものの底上げした「悲しみのフェスタ」のセールスを上回れず、翌年には<PC>に移籍。
ちょっとH顔?で実力派アイドルを目指しましたが、
女性ファンを味方に付けて売るには時期尚早でした。
とんねるずのバーターをしても限界があったのはおニャン子時代のせいでしょうか?。

(from『THE BEST』真璃子)
VOL.77「わかっているわ、ダーリン」和久井映見 (H4.1.25) <PS>
作詞:康珍化/作曲:亀井登志夫/編曲:門倉聡
今回はアイドル女優から(といっても当時はメジャーではなかったが)上手くシフトして
あとはヒット曲を出すだけ?の和久井映見の4th.シングル「わかっているわ、ダーリン」を
ご紹介します(オリコン最高位95位、売上0.3万枚)。
作詞は康珍化。作曲:亀井登志夫、編曲:門倉聡とのトリオではデビュー曲を手掛けています。
作詞・作曲のコンビでは松本伊代「抱きしめたい」「チャイニーズ・キッス」があります。
康珍化は松本隆と並んで好きな作詞家の一人ですが、その作風は青春シミジミ系、
企画色濃い狙い物系、そして来生えつこ的難解系と変幻自在です。この曲は難解系。
でも来生えつことの違いは必ず魅力的なセンテンスがあることです。
特にBメロそれも2番の歌詞はありそうでなさそうな表現で唸らせます。ただメロディーに
引っ張られたサビはイマイチ。〜よ…とか、〜さ…など突然で浮いていて阿久悠風。
メロディーは大まかに言えばA-B-Cの構成。歌詞同様A・Bメロはとても魅惑的です。
特にBメロでは一瞬メジャーが混ざり合いとても色っぽいです。
それだけに色気が全く欠けるサビが惜しまれます。
確かに洋楽っぽいメロディーですがこの平坦さには日本人は満足しないのでは?。
編曲の門倉聡は<PS>御用達のアレンジャー。どういう経歴の人か知りませんが
「Sexy
Music」以降のWinkのシングルをほとんどアレンジしています。
下品でコテコテで派手にすれば良いってもんじゃないよ!というアレンジが多い人ですが、
和久井映見作品では上品で洒落たアレンジをしてます。この曲は後ノリでハネ物のサウンドで、
所々バスドラのハネがうるさい箇所もありますが、デジタルとアナログの具合もバッチリ。
彼女の弾けた世界を無理なく引き出しています。
ボーカルは意外と“上手いんだな〜これが”<古い!>。ちょっと鼻声で甘みが増しますが、
ぽそぽそ話すイメージとは一転貫禄さえ感じさせます。ビブラートの揺れ具合も程良くて
色気があります。ところで彼女の歌手活動ですがデビュー当時確か歌謡BinBinハウス?
あたりに出たぐらいで、ほとんど歌番組に出演した事はないはず。
その昔雑誌で読んだ事務所の社長のコメントによると極度のあがり症で
歌番組は話にならないとか。その割には地味に歌手活動は続いていますね。果たして
主演ドラマの主題歌を歌い松本明子のように歌番組を総なめする日は来るのでしょうか?。

(from『SINGLES』和久井映見)
VOL.78 「紫外線」 沢田玉恵 (S61.7.21) <CS>
作詞:松本隆/作曲:筒美京平/編曲:船山基紀
最近の筒美京平ブームで各社からオムニバスアルバムがリリースされ、
何曲か懐かしいナンバーも聴けるようになりましたが、なんでこの曲が収録されないの?
って曲もあります。そんな曲の一つに沢田玉恵「花の精
-私のON
AIR-」があるのですが、
今回は彼女のセカンドシングル「紫外線」をご紹介します(オリコンTOP100ランクインせず)。
作詞:松本隆、作曲:筒美京平、編曲:船山基紀のトリオでアイドルの王道を行っています。
歌詞は松本隆お得意の幻想世界ではありませんが、男の視線をテーマに
15歳位の女の子にしては非日常を歌っています。男と乗ったヨットのデッキで寝そべる
彼女は何者でしょうか?。そして“紫外線
視線がいい線 紫外線
意外に少年”と
珍しく韻を踏んでいる歌詞が出てきます。果たしてこれはありなのか…。
僕は見ていてちょっと恥ずかしくなります(ダサくないですか?)。でも2番に出てくる
“わかんないけど〜”の「ら」ではない「ん」に職人としての心意気を感じます。
メロディーはいかにもの京平節。歌詞はA・B・Cブロックと別れていますが、
その中で幾つもの動機が現れるテンション系の音を多用した仕掛けの多いメロディーです。
逆に言うとやや散漫。ここだっ!という生理的に突き抜けるサビのメロディーは残念ながら
見当たりません。この曲が売れなかった原因はこの辺りか。
Bメロの“好き
嫌い”の後の変調子にも、らしさがたっぷりです。
編曲の船山基紀も真骨頂を発揮。シンバルを16で刻みゴージャスなシンセサウンドは
ラテンフレーバーで仕上げ、めまぐるしく変化する京平節を引き立てています。
わかり易く言えば沢田玉恵版「生意気」(by中山美穂)でしょうか。
森川由加里が歌う筒美京平作品にも近い物があります。
ボーカルは上手いようでそこそこ。透明感のある声質ですが中〜低音のふてぶてしさが最高です。
突き放すような貫禄たっぷりな歌いっぷりもGood。ただ高音部やファルセットの力強さに
欠けるのが惜しいです。あと“ちょっと待って”の音符が詰まる所のリズムが甘いのが少々気持ち悪いです。
でもまだ若いのだからまだまだこれから、と思っている間に宮本輝の「蛍川」の映画出演を最後に
芸能界から姿を消しました。ソニー酒井のプロジェクトでしたがその幕切れはあっけない物でした。
水が合わなかったのか、トラブルがあったのか真相は知りませんが、
シングル2枚を残し愛知県産ドロップアイドル水谷麻里の先駈けとなりました。

(from『スーパー・アイドル・ヒット!』<CS>オムニバス)
VOL.79 「雨に消えたあいつ」 伊藤智恵理 (S62.11.6)
<CS>
作詞:戸沢暢美/作曲:岸正之/編曲:新川博
先日TOWERレコードで買い物する機会があったのですが、その時貰った冊子
「TOWER」NO.32に4月11日リリースのChieriのファーストアルバムの記事が載っていました。
そこで今回は彼女の十代の姿である伊藤智恵理の3rd.シングル「雨に消えたあいつ」を
ご紹介します(オリコン最高位22位、売上2.0万枚)。
作詞は戸沢暢美。デビュー曲からこの曲までシングルを手掛けており、
2nd.シングル「トキメキがいたくて」に続く作曲:岸正之とのコンビです。
南野陽子「話しかけたかった」もこのコンビです。歌詞は大好きな男の子から友達にしか思われず、
他の娘の恋の手助けをする振りをする何とも物哀しいストーリーです。
でも雨の中見送る彼に一字違えた電話番号を渡す辺りは意地らしくて痛快です。
メロディーはどメジャーベースの8ビート。構成はA-A’-B-C-C’。
所々にマイナー展開を含んだメロディーで切なさをぐっと盛り上げます。
サビからのメロディーは林哲司風でもあり(元々作風が似ている)、
国安わたる作曲「もう君の名前も呼べない」にも似ています。
スコーんと抜けるというより、聴いてしみじみといった雰囲気です。
編曲は新川博。「悲しみモニュメント」、「真剣」等のアレンジも手掛けています。最近はデジアナ系の
アレンジもしていますが、この頃は打ち込み中心のサウンドを作り出していました。
サビと同じ歌詞&メロのコーラスから始まりますが、全体に渡り洒落たコーラスワークになっています。
ただ戴けないのがリズム隊。音色的には悪くはないですが、おかず的にも盛り上がりに欠け、
淡々と進んでしまいます。特にサビ前の取っ掛かりはつまらないです。
行けそうで行けない、そんな感じです。イントロや間奏も派手な主旋律が無いのでぼやけています。
ボーカルは優等生の印象。それ故にしなやかさに欠けるというか色気がありません。
楽譜通りに歌うだけでは心ひかれません。楽譜通り歌えない人も居りますが…。
それからさ行と「つ」の発音で舌の先が割れるような感じがするのがちょっと気になります。
でも伸びやかな声質の素直なボーカルには清々しい若さが溢れています。歌詞も聴き取り易いです。
アイドル女優と平行して歌手活動を行っていた彼女ですが、歌手としては大ブレイク出来ませんでした。
スタイリッシュな感じはしたもののルックスに華がないというか、
目元のショボさが少々貧乏臭さを漂わせています。今回のアルバムのジャケ写を見ていると、
顔つきもだいぶ力強い感じになりました。眉が細くなったのは時代か。新生Chieri、頑張って下さい。

(from『HELLO』伊藤智恵理)
VOL.80 「星屑のイノセンス」 伊藤かずえ (S63.2.16) <FL>
作詞:麻生圭子/作曲:小室哲哉/編曲:清水信之
春の特別番組の為たまたまドラマ「羅刹の家」の初回を見てしまいました。
晩御飯がてら眺めていると、髪が昔のロングヘアに戻りつつある彼女が昔の
大映ドラマを彷彿させる素敵な苛めっぷりを披露していたので、今回は伊藤かずえの
「星屑のイノセンス」をご紹介します(オリコンTOP100チャートインせず)。
作詞は麻生圭子。内容は夢を追いかけ町を出ていく君を見送り
それぞれの明日のために前向きに生きましょう、という女性の気持ちを綴っています。
でも悲しんでいる割には物分かり良すぎて怖いくらいです。
それに「忘れてくれていい楽しかった思い出なら」って件は何か横向きで好きになれません。
作曲は小室哲哉。アレンジの清水信之とのコンビには小泉今日子「Good
Morning-Call」が
あります。構成はA-B-C-D。大体一つのブロックに同じ動機が2回出てきます。
A・Bメロはマイナーで、Cメロの終わりでメジャーへ展開そしてサビになります。
またA・Cメロは16分音符で畳み込みB・Dメロはシンコペーションを多用し弾む感じになっています。
前半と後半とでは別の曲のように聴こえる小室節の典型です。
サビはいまいち色気がありませんが、個人的にはBメロが大好きです。
編曲は清水信之。バリバリの打ち込み物で、多分小室氏のデモテープがかなりの
ウェイトを占めていると思われます(特にBメロはキテます、Goodです)。
派手だし別に悪くはありませんが、だったら小室本人がアレンジしても良いのでは?。
特にリズム隊に小室氏特有の無意味な重量感があったらもっとBESTなテイクに
仕上がったのではないでしょうか?。
ボーカルはもう一息。デビュー曲の方が上手な気がします。
MIXのせいかややサウンドに押され気味。緊張しているのか、キーが高いのか、
不自然なビブラートが付いて回り、聴いている方にも緊張感を与えます。
結構この曲では歌番組に出演していましたがよく声を裏返していました。
彼女はホリプロ移籍、<FL>移籍に伴いKAZUE
ITOH名義で歌手活動を行いました。
「星屑のイノセンス」はNHKアニメ「三銃士」のイメージソングのタイアップがありましたが、
CO社在籍時を上回るヒットにはなりませんでした。すでに多くのヒットを放っていた
小室哲哉でしたが、番組のメインの視聴者と思われる若年層が小室サウンドを
理解するには少々時代が早過ぎましたか?。

(from『MEMORIAL POP
SHOP』<SFC>通販、オムニバス)